リンチ映像の力技！　袋小路の不条理サスペンス

●デビッド・リンチ監督といえば、だいぶ前になるが『ツインピークス』と『ワイルド・アット・ハート』あたりが記憶に新しい。って事はそれ以降代表（もしくはヒット）と呼べる作品が出てなかったというコトだ（！）。しかも私は前者を未だまともに見ていない。トホホ（←いいのかソレで）。 ●リンチ監督の作品群にはいくつかの共通点がある。まずスト−リーが完結しない、映像に独特の暗さ（重さ）がある、とことんお気に入りの俳優を使う、いわゆるフェティッシュだ、……あまりに乱暴＆認識がアマイとコアなファンには怒られそうだが、わかり易いのはだいたいそんなトコロだ（あ、「音」に異常に執着するってのも入れとこう）。 　また不思議なことに、リンチ作品は寡作とか凡作だとか評されるモノがひとつもない。というのも、犬も喰わない大駄作（『砂の惑星』『ツイン・ピークス　ローラ・パーマー最後の７日間』然り）か史上に残る大傑作（『イレイザ−ヘッド』『エレファント・マン』『ブルー・ベルベット』然り）のどちらかだから。個人の感覚の差はもちろんあろーが、映画界の、ひいては世間一般の認識といえばこのふたつしかないという、まっこと珍しい監督なんである。 ●そんでもって『ロスト・ハイウェイ』。始めから終わりまで貫かれたある種の緊張感は、やっぱりダテじゃない。気づくと、リンチの映像パワーと伏線てんこもりの展開についつい引きずり込まれてしまう自分がいた。なんだかもて遊ばれてるカンジぃ（笑）。 　例えば、昼でも薄暗い部屋の中。毎朝届く謎のビデオテープ。主人さえ知らない妻レネエの隠された過去の真相。途切れる記憶。このうっすらと狂気を孕んだ日常に、じきに見るモノ全てが何かおかしいと思えてくる。じわじわと背筋にくる、イヤーな嫌悪感。ふと例えようもない恐怖に捕らわれて、思わず小さな悲鳴をあげそうになる…そんな映画だ。リンチは翻弄され、動揺し、恐怖する私たちを高みから嬉しそうに見物してるようだ。「これでどーだ」と言わんばかりに。そして私たちは気づくのだ。このゲンジツでもブラックホールは常に口を開け、獲物の到来を待っているんだと。

人物描写 ★★★ 心理ダメージ ★★★★ フェティッシュ ★★★ 総合評価 72／100点 　注：★５つが最高。 　評価は独断と偏見によるモノです。 　 ↑全てはこのセリフから始まる… 　 　 　疑惑のふたり、レネエとアリス。

■■　ロスト・ハイウェイ（超主要）人物図　■■

◆　ひと組の夫婦のごく当たり前の日常。だがその裏には不可思議な事実がいくつも見え隠れする…　◆ ↑不可解なストーリー進行のカギを握る、全てを知る男"ミステリーマン"。最後まで彼の正体が明かされるコトはない。 　　　　　　　 　　↓変質的な効果音の挿入に 　　　　ゾゾッ。 　　　　 　◆　レネエに生き写しのアリス。ふたりは同一人物なのか？フレッドはなぜピートと入れ代わったのか？　◆ ◎お気に入りシーンはこちら　>> ●

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